全てこれ善し

 赤ちゃんの無邪気な笑顔なんて、嘘だと思う。彼ら、結構考えてる。狙ってる。悪いことしてる。取引もするし、天使ではない。いつまで見ていても飽きない。その瞳の奥で、何考えてるんだろう。どこまで考えてるんだろう。

 両手を伸ばして、私、お母さんに抱き着いてくる。ぶえーんと泣く。さみしいだけで泣く。痛くなくても、お腹空いてなくても。歌ってあげると笑う。

 この子を産んでよかったのかとか、考えたことが無い。この子が全身で発している。「全てこれ善し」と。すごい自己肯定感。うちの子だけかな。みんなそうなのかな。

 世界を肯定して、「全てこれ善し」と。だから私は、ただお世話をする。ひたすら育てる。今善し、将来善し、過去も善し。彼がそう言うから。まだしゃべれない体で。

母として、妻として。

 別居中の夫と話し合いをした。

 私はもう、離婚でもいいというか、そうするしかないと思って、そう言った。離婚したいわけじゃないのは、好きで結婚して離婚したい人なんていない、という意味で。

 夫は、やり直したいと言った。謝りもした。

 DVとか、モラルハラスメントとか、そいうことを考えると、これは典型的だし、ほだされちゃいけないところなんだと思う。子どもだっているんだから。

 夫は、だいぶ以前の夫に雰囲気が戻っていて、「すぐに結論をださなくてもいいんだし」と言った。元々、夫は頼りがいがあって、優しい人だったなあと、思い出した。今は、自分が火種を作っておいて、燃え上がらせておいて、それでそんな風に言うなんて、おかしな物言いなんだけど。

 カウンセラーの人が言ってくれた、「子どものためじゃなくて、あなた自身がいいようにすることが、子どもにとっても一番いいこと」というフレーズが心に浮かぶ。子どものことを考えると、きっぱりさっぱりすべきなのかもしれないけど、私はやっぱり、好きになった気持ちをまだ忘れられないんだ。こんなお母さんでもいいのかな。