よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

この子がいれば、何もいらない

 職場の後輩が、昇進に必要な試験に落ちた。なかなか難しい試験だから、2回目で通る人もいる。それで大きな支障はない。だけど、彼女は今、妊娠中だ。来年以降、リベンジで受ける時には、子どもがいる。来年なら、0歳の赤ちゃん。再来年にしても、1歳の赤ちゃん。

 あんまり、3年も5年も後だと、今年頑張った受験勉強も忘れてしまって一からやり直しになるだろうし、何年も無資格でいるのは、さすがに仕事にも支障が出てくる。ポストを後輩に追い抜かれていくのも、前例がなく、お互いにやりにくいだろう。

 でも、赤ちゃんを育てながら、今回は身重とはいえ独り身で落ちた試験に合格するというのは、無理じゃないかと思ってしまう。やろうと思えば、やれるかもしれない。でも、やろうと思わないんじゃない? 赤ちゃんのお世話なんて、無限にやることがある。ようやく寝かしつけが終わっても、気力も体力も残っていない。赤ちゃんが起きている時なんて、トイレに行く時間も、歯みがきをする余裕も見当たらないくらいなんだから。

 そして何より、この満ち足りた気分。がつがつ勉強なんて、なかなかする気にならない。ここに、可愛い子がいるんだよ? その子のお世話に明け暮れて、何が不足? そんな気分なのです。自分の時間、子どもに依存しない生きがい、子どもの生活や教育にかかる費用。そんなものまで、まあそんなに焦らなくてもいいんじゃないか、という気分に不思議と出産後はなっている。

 この子がかけてくれた魔法に、もうしばらく、かかっていたい。人生の心理、ここにあり。この子とのかけがえのない時間。満ち足りるということを教えてくれた、かわいい生き物。