優しい子

 ぎゅーっと私の頭を抱きしめてから、「イイコイイコ」という感じで撫でてくれた。たっちゃん2歳。かわいいなーと思って顔を見ていたら、そんなことをしてくれたとバアバ(私の母)には報告したけど、それは嘘なんだ。本当は、お母さんちょっと元気がなくなっちゃって、思わずたっちゃんの顔をじーっと眺めちゃったんだ。夫のことで悩んでいて。

 小さなたっちゃんに気を使わせてごめんね。奇跡みたいだけど、そして誰も信じてくれないとわかってるけど、たっちゃんってそういう子なんだ。そういうことができる子なんだ。不思議。こんな小さいのにね。高級な人間だと思う。

 優しくて、思いやりがあって、いつも一生懸命で。バス(のおもちゃ)をブッブーと走らせるのも本気。お風呂に入る時には私がいつも髪を拭いているピンクのタオルを引き出しから出して、にっこり渡してくれる。私が先に取り出すと怒るけど。人の悪口も言わないし、人に嫌みっぽいとかも言わないし、たっちゃんの方がよっぽど、大人たちより素敵な人間だ。

 もちろんたっちゃんは自分のご飯も作れないし、必要なものを買うお金も稼げない。でも、それよりも、心がきれいで暖かい方が大事だと思う。私たちは、いろんなことを知って、いろんなことができるようになるために、心をすり減らし、汚してしまうのだろうか。

 私たちは何のために、どこに向かっているのだろう。もう二度と、たっちゃんを失いたくない。